HYO!ヘキ
更新日: 2011-04-30 (土) 14:09:30
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
昨日放送ドラマHYO!ヘキの億→喜多沢です。
ネタバレ含みますので見てない方はスルーして下さい。
一面の白い闇。
その中を俺は必死で落下した喜多沢を探していた。
嘘だと何度も何度も繰り返しながら、ただあいつを求めていた。
共にK2を登りきると約束した。
生きたいと言った。生きて帰ると約束した。
喜多沢。
喜多沢。
どうしておまえがいないんだ。
いつからだったろう。
「億寺」
喜多沢に名前を呼ばれるといつも喉の奥が熱くなった。
いつも嬉しいのか悔しいのか分からない感情が湧きあがった。
いつだってあいつに名前を呼ばれると、あの笑顔を向けられると、
自分の全てが喜多沢に引き寄せられる感覚に支配された。
抱えきれなくなりそうな感情を持て余しながら、
けれど心のどこか片隅でそれを厭ってはいない自分を知っていた。
そして喜多沢の隣にいるのならば、パートナーでありつづけるためには、
不要な想いであることも知っていた。
だから俺はどうしても捨てられなかった感情を自分の奥底に沈めて蓋をした。
そうして何でもないような顔をして喜多沢の隣にいることを選んだ。
五年前の事故の後、俺は喜多沢に名前を呼ばれるのが辛くなった。
日の光のような笑顔を向けられるのが堪らなくなった。
自分のせいであいつの命まで危険に晒した。
それは拘るところではないと頭では理解していた。
けれど感情がついていかなかった。
二人でザイルを繋ぎ岩壁に挑む限り、危険は互いに承知の上の筈だった。
あの事故にしてもどちらが落石の被害にあってもおかしくはなかった。
あの時はたまたま自分だっただけ。それだけのこと。
そして、最悪の事態の時、その時の覚悟もできている筈だった。
俺はザイルを切られても当然だと思う。それが正しい判断だ。
けれど喜多沢はザイルを切らなかった。危険を冒してまで俺を助けた。
その事実が俺を弱くした。
臆病にした。
このままニ人でいたら、二人で登りつづけていたら、
いつか同じような場面が巡ってきたら、
その時また喜多沢は命の危険を冒すのだろうか。
俺はもう自分のリスクを喜多沢に預ける気にはなれなかった。
「あの時ザイルを切れなかった喜多沢の甘さは死と隣り合わせの世界では危険すぎる」
俺が喜多沢から離れた理由。
けどそれは本当でもあり、嘘でもある。
喜多沢。
俺は怖かった。
本当は。
命がけで俺を助けたおまえに、その行為に、
何らかの感情を見出そうとしている自分が怖かったんだ。
おまえへ抱く感情が歯止めがきかなくなりそうだった。
おまえの笑顔に仕草に勝手に期待して勝手に落胆する身勝手な自分がいた。
今までのように傍にいるだけでは我慢ができなくなった強欲な自分が、俺は怖かった。
そして、自分の抱えている叶わない想いが、喜多沢に拒絶されることが怖かったんだ。
もう一度喜多沢が俺をパートナーとして指名してくれた時。
億寺じゃなきゃだめだと言ってくれた時。
本当は嬉しかったんだ。
自分が抱えてきたものとか関係なく素直にそう思えたから、
時間を重ねて五年前よりも強くなれたと思ったから、
おまえのパートナーになれると思ったんだ。
でも違った。
俺は弱かった。何も変わってない。
女のことばかり気にしてる喜多沢に苛ついた。
集中できてなかったのは俺の方かもしれない。
猛吹雪が視界を遮る。
白く冷たい空間で自分の感覚がどんどん麻痺していくのが分かる。
喜多沢がいない。探しても探しても見つからない。
呼んでも届かない。
嘘だ。こんなの嘘だ。
上へのルートを確保して戻ってきた時、意識がない喜多沢を見て血の気が引いた。
どんな時にも感じることのなかった恐怖に全身を縛られた。
あれは失う恐怖だった。
どうして。
意識せずに漏れた言葉。
一生言うまいと思っていた想いを言葉にしてしまったのは俺の弱さだ。
どうしてあの時好きだなんて言ってしまったんだろう。
どうしてこんなに追い詰められないと言えなかったんだろう。
喜多沢。
他の女を好きでもいい。
俺を見なくてもいい。
馬鹿みたいに甘い考えでも、ずるい部分を持っててもいい。
おまえはおまえのままでいいから、だから、
頼むから居なくならないでくれ。
喜多沢。
俺を呼んでくれ。
白い悪魔が咆哮を上げる空間で俺はただ一人の名前を呼び続けていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
昨日の放映を見て萌えと勢いで書いてしまいました。
億がこんな気持だったらいいなーと妄想していました。
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