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2005赤黄でほんのり

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                    |  2005超英雄時間(要英訳)前半、マジカノレでブラザーな船体だって
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  赤黄でほんのり。その5話目。
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 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ メズラシク投下間隔短メ
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困ったな…。
うん、困った。
この家の数少ない欠点は、内緒話ができないことで。
内緒話って好きじゃないから、今まで特に不便には思わなかったんだけど。
今回だけは、兄ちゃん姉ちゃんには聞かれたくない。
「おまたせ、カイ」
暖炉をすり抜けて魔方部屋に入った瞬間、目的の相手から先に声をかけられた。
「ヒ力ノレ先生…」
他には誰もいない部屋、机に座って俺を見る先生はやっぱり『先生』の顔をしてる。
「二人だけの秘密の話がしたかったんだろう?」
机を挟んで立つ俺の瞳を覗き込むように、ちょっとだけ首を傾げて聞いてきた。
「あー…うん」
俺の返事とも言えないような返事が意外だったのか、
ヒ力ノレ先生の首がもうちょっと斜めになって、溜息と一緒に元に戻った。
「話を、聞こうか」
真面目な声で言った先生の、軽く指を組んだ手が机に置かれる。
気分はすっかり職員室への呼び出し。
「でも…」
振り返った。入り口の暖炉では、薪が小さな音をたてて燃えている。
この家は、特にこの部屋は完全オープンスペースだから…。
「大丈夫」
先生は俺の表情を読んで笑いかける。
「誰かが近づいたら鳴るようにしてあるから」
そう言って、右手のグソップフォソをちいさく振った。
「…」
でも…。

「大丈夫」
俺の視線を追ってランプと鉢植えを見た先生が、同じセリフを繰り返した。
「彼らにはちょっと眠ってもらってる。朝まで起きないよ」
そう言って、今度はウインク。
さっすがヒ力ノレ先生。やるときはやる。
「それじゃ」
わざとらしく咳払い。それじゃ、遠慮なく。
「俺、強くなりたい!」
「え?」
「強くなりたい!」
繰り返した。だって、先生、判ってないって顔してる。
「今よりも?」
「うん。今よりも」
大きく頷いた。
「…どうして?」
「え…?」
今度は、俺が判ってないって顔になったと思う。
だって、聞き返されるとは思わなかった…。
「突然、しかも僕だけにそれを伝えるってことは、何か特別な理由があるんだろう?」
「理由…」
「そう。強くなりたい理由」
ヒ力ノレ先生は穏やかに繰り返す。
理由…理由…。
あーもどかしいな!考えがうまく言葉にならない。
「…」
「…」
ガシガシと頭をかきながら考える俺を、先生は辛抱強く待ってくれる。

「…守りたいから」
しばらく考えたんだけど、言葉はこれしか思い浮かばなかった。

守りたい

これだけが心の中いっぱいになって、思考停止。
「何を?」
「え?」
「または、…誰を?」

ドキ

言い直した先生の言葉に、一瞬だけ心臓停止。
だれを――?
ゴメン先生。これだけは言えない。ごめん。
「…強い人を」
でも、この答えも嘘じゃないよ。強いよ。
「カイよりも強い人?」
「んーどうだろ?」
腕組み。
そういえば、最近本気でケンカしてないな。中学の頃の勝率ってどのくらいだったかな…?
俺のほうが強い。
そう答えるのは嘘のような気がして。
俺のほうが弱い。
そう答えるのはなんとなく嫌で。
「同じくらい…かな?」
結果、ビミョーな答えになった。

「あーでもやっぱ強いよ」
時々、絶対に敵わないって思うもん!時々、だけど。
あ、でもマキト兄ちゃんにも姉ちゃんたちにも思うか、それ…。
「ともかく!」

バン

両手で机を叩いた。
「俺は強くなりたい! 強い人を守れるように!!」
「どう強くなりたいんだい?」
さっきから先生は質問ばっかりだ。
「どうって…」
それも、答えに困る質問ばっかり。
「だから…強い人を守れるように…」
「その人の、何を守るんだい?」
「なに…って…」
「もう少し絞っていかないと」
先生はそう言って、また俺に考えさせる。
うーん…。なんだろな。

背中。

まぁ、そうなんだけどさ。背中守ったら、前がガラ空きじゃん。
俺の前にいるからあんな、嬉しいのにイライラする妙な気分になるんだもん。
正直、あんまり背中は見たくない。
守りたいのはもうちょっと大きいというか、広いモノだよなぁ。

そしたら、命?

守りたい。勿論守りたいよ、死んで欲しくなんかないよ。
でも、それを俺が守るっていうのは違う気がする。
なんっていうのかな、そう思うこと、そうすることは物凄く…失礼な気がするんだ。
そりゃ、危ないときは助けに走るよ。
でも、これに関しては同じ方向を向いてるべきでさ、俺がそっちを見てちゃいけないと思うんだよね。
俺が『守りたい』っていうのは、もっとこう…いつもずーっとさ…。

じゃあ、心?

「うっわ…」
声が出ちゃった。
そんなでっかいもの、俺がどうこうできるわけないじゃん。
「んー」
もう一度頭を掻いた。
確かに、俺は全てを守りたいわけじゃないんだよなー。そういうの必要ないしなー。
ふと。
笑顔が浮かんだ。
ちょっと馬鹿にしたような、ちょっとむかつく、いつもの笑顔。
「笑顔…かなぁ」
っていうか、何度目かの思考停止。
一度浮かんじゃったらもう他の考えが出てこないや。
「じゃあ、もうひとつ質問」
「またぁ?」
もう考えるの疲れたよ。早く強くなる方法教えてよー。
「これが最後だから」
先生はいつもの調子で笑ってる。

「どうして、その人を守りたいの?」
「え…」
その笑顔のまま繰り出された質問は…効いた。
しばらくは呼吸するのも忘れてたよ。

どうして?

どうして…だ?
どうして俺はこんなに…? え?
机の隣で寝てるランプと鉢植えを見た。
鼻ちょうちんならぬランプちょうちんが出てるけど、答えは出てこない。
机の隅の写真立てを見た。
あまり俺に向けてくれない種類の笑顔に、答えは書いてない。

Pipipipipipipi…

机に置かれていたグソップフォソが鳴る。
「うぁあ!?」
手にしていた写真立てを落としそうになって、慌ててこらえた。
これを壊したら、みんなから半殺しじゃすまないよー!!
「一旦休憩だね」
ヒ力ノレ先生も肩をすくめる。
そっと写真立てを戻して、誰が入ってくるのか見ようと振り返った。
「…あ、悪ぃ」
俺たちを見てちっとも悪びれずにそう言ったのは…一番来て欲しくなかった男。

「小兄!」
「なんだよ」
俺が睨みつけてるんで、小兄の唇が窄まる。
怒ってる…違うな。小兄のこの顔は、困ってるんだ。
「どうしたんだい、シバサ?こんな時間に」
「いや、あー、うん」
返事になってない言葉をぶつぶつ言いながら、持っていた数冊の本を棚に戻してる。
すごいなー。ちゃんとどれがどこにあったか覚えてるんだ。俺、無理。
「薬作ろうと思ったんだけどさ、取り込み中みてぇだからまたにするわ」
「薬?」
「何なに?惚れ薬かなんか?」
「ンな訳あるかバカ。傷薬だよ。どっかの赤いのが先陣切りまくってるおかげで、最近消費が激しいんだ」
「!? 俺のせいかよ!」
小兄は答えの代わりにニヤリと笑う。
あーもう、むかつく!
「あれ?」
ヒ力ノレ先生が首をかしげた。
「シバサ、傷薬程度ならもう魔方書なしでも作れるようになったはずだよね?」
「…」
あ。
小兄固まった。珍しい。
「…もうちょっと、治りの早い奴を…さ」
「そうか」
ボソリと答えた小兄に先生が微笑む。
なにそれ?小兄照れてんの?なんで?
「幸い、実験台には困らねぇし」
なんだ。小兄全然照れてないんじゃん。
それどころか…あーむかつく!

「んーじゃ、おやすみ」
右手をヒラヒラさせながらそう言って、黄色の魔方使いは入ってきたときと同じように悪びれた様子なく出て行った。
「おやすみ」
暖炉から姿が消える寸前の小兄に声をかけた先生が、俺に向き直る。
俺も先生の顔を見つめ直した。
けど…。
「…先生ごめん。また今度でいいかな」
本当ゴメン先生。自分であれだけ迫っといて。
でも、今ので思いっきり疲れちゃったよ…。
「そうだね。日を改めようか」
先生は立ち上がり、俺の肩をぽんと叩いてくれた。
「それまでひとつ宿題だよ」
「宿題?」
「そう。最後の質問の答えを見つけておくこと」
「最後の、質問…」
俺の呟きにニッコリと微笑んで、天空正者が魔方部屋を後にした。

『どうして、その人を守りたいの?』

「どうして――」

どうして、小兄を守りたいの――?

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 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ おそまつ。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) いい加減気付けや末っ子。
 | |                | |       ◇⊂    ) __ 
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