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銀魂 大西×空知

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                    |  某週刊漫画担当編集者多西×漫画家空矢ロ
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  金艮云鬼の1巻が出たばかりのころだよ!
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) エロスナイヨ
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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悲壮な声が電話から漏れる。
「おーにし、なんかおかしいかも。ていうか、おかしい。」
ついさっき、駅前で別れた時は何も言ってなかったのに。

「確かに原稿16枚お預かりしました。」
1枚1枚確認して、宝石でも受け取るように丁寧に封筒に入れる。
少し微笑んで、机の前にだらりと手を投げ出した天然パーマに声をかけた。
「じゃあ俺、社に戻るから。」
あまりの暑さと疲労に、倒れこんだ屍体が3つ。空矢ロと、アシスタントさんが2人。
脱稿後はいつもこんな感じだ。
大の男が3人、夜通し作業をするには、この部屋は狭すぎるし、暑すぎる。
さっさと広いクーラー付きの仕事場に引っ越してしまえば解決する問題なのだが、
空矢ロが言うには「金が無い」のだそうだ。
確かに新人の原稿料など、たかが知れているし、
アシスタント代――これが高いのだ――を払うと残りは全て生活費だ。
連載が軌道にのって安定するまでは、経済状態は連載前とほぼ同じ、
もしくはちょっぴり肉が食えるだけ。
それが日本で最も有名な漫画雑誌における新人漫画家の実態だった。

「お疲れ様でした。」
そう言って、扉の方に向かおうとすると、とりわけ異臭を放っている屍体がぴくり、と身動きした。
「おーにし待って。俺も一緒に出る。」
「…寝てた方がいいんじゃね?死にそうな顔してるけど。」
「銀行いきたい。財布ん中135円しかない。アシスタント代払えない。」
俺の腕を手すり代わりにして、空矢ロが重そうに体を動かす。
しょーがねぇなと言いながら、空矢ロの手を掴んで机から引き起こした。
なんとなくそのまま、ふたりで家を出て駅までゆらゆらと歩く。
「引越ししたいなぁ。」
「して下さい。俺もお前んとこ行くの嫌になるくらい暑いです。」
「んなこと言うわりに、用もないのにいつも来て長居すんのはどこの誰ですか。」
そんなふうに軽口を叩きながら手を振って別れた。駅のホームで電車を待っていると、携帯電話が鳴った。

「おーにし、なんかおかしいかも。ていうか、おかしい。」
「どうした?」
数分前とは完全にトーンの違う声。動揺して、焦っている声だ。電話を握りなおして耳に押し付ける。
足はもう、改札の方へ向かっていて、心臓の鼓動が大きくなっていくのを感じた。
「連載、終わっちゃうの?俺、契約切られるの?それとも会社つぶれんの?」
何を言っているのか、さっぱり分からない。何があったのかも、さっぱりわからない。
それでも、空矢ロが動揺していることだけは分かったので、
落ち着くように言ってきかせ、2段飛ばしでホームの階段を登った。

改札の前に、心底、不安そうな顔をして立っている空矢ロを見つけた。
跳ね上がった息を整えながら、ゆっくりと近づく。
「コレ見て。」
そう言って空矢ロが差し出したのは、悲しいまでにささやかな数字が並んだ預金通帳だった。
不思議に思っていると、一番最後、と言われたのでページをめくる。
最後の行に印字されたものを見て、急に力が抜けた。
嫌味をこめて、長いため息を吐く。なんだ、コレか。
『振込 カ)シュウAシャ』
その横には、今までの数字のラインナップからはケタが一つ違う数字が自己主張しているのだった。
「なんだ、コレか。」
走って損した、と言うと空矢ロは動揺したまま詰め寄って来た。
「なんだじゃないですよ。なんで今月こんな多いんですか。て…っ、手切れ金!?」
あくまでも真剣な空矢ロの様子が可笑しくて、我慢出来ずに噴出す。
「違う違う。コレ、1巻初版の印税。会社から明細送ってるでしょ。」
あー、やばい。可笑しすぎる。

笑いながら空矢ロに通帳を返す。空矢ロのぽかんとした顔を見ると、もう止まらなかった。
「明細…来てたっけ。」
「お前の机の横で、封も切らずに放置されてるの見ましたけど。」
空矢ロがまじまじと通帳を眺めながら、小さな声で言った。
「こんなに…買ってくれた人がいるんだ…。」
あぁ、もうすぐ涙目になるんだから。
思わぬ全力疾走をさせられて汗ばんだ指が、ふいに空矢ロの目元に触れる。
「センセ、お祝いしましょう。大金入ったんだから奢ってくれますよね。
会社に原稿届けたらまた戻ってくるから。」
「うん。」
妙に素直な返事が愛しくて、空矢ロの涙を指で拭った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
去年書いたのを今頃発掘したらしいよ。
連投規制かかっちゃったので、STOPだけ携帯から…。


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