頭文字(イニシャル)D 赤城山の兄弟
更新日: 2011-05-01 (日) 09:23:41
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| 仁D赤城山の兄弟 >251続き。
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| やっぱりエロなし
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日が西に傾きかけた頃、バトルに向けた準備作業も最終段階に入った。
FCはメカニックと頻繁な打ち合わせをし、細かな指示を出す。
Dのメンバーがそれぞれに散って作業をするのを少し離れたところから眺めていた。
どれだけ完璧にセッティングをしても、どれだけ完璧に勝つためのシミュレーションをしても
最後はドライバーだ。
FCが全幅の信頼を置くエースドライバー。86と……そしてFD。
「K介の奴……」
FDのことを考えた途端、出発前の事が妙にリアルに甦ってきた。
一体誰と勘違いをしたのか。この自分と誰かを間違えたことが許せない。
FDがあんな顔をするからつい思考が停止してしまったのだ。
何の憂いもなく、ただ二人で遊んでいた幼いあの日のように。
FDはいつも自分の後を追ってきていた。犬コロのように。振り返るとあの笑顔を見せてくれた。
FDに今あんな顔をさせる相手は一体誰なのか。
(何なんだこれは。これではこの俺が嫉妬しているようではないか)
キスされたことよりも誰かと間違われたことの方が許せないと考える自分に愕然とする。
「バカな!」
そんな感情は絶対に認めない。プライドが許さない。
即座に切って捨てた。
キスそのものは不快ではなかった。
あの笑顔が自分に向けられたものだったならあるいは……。
そこまで考えてハッとする。
(あるいは? あるいはなんだというのだ。一体俺は何を考えているんだ)
全てにおいて理路整然と分析し、行動してきたFCにとって
割り切れない感情が自分の中に存在することが腹立たしい。自分で自分が許せなくなりそうだ。
無意識のうちに唇を噛んでいた。
「R介」
後ろから近づいてきた広報部長がFCと同じ方向に視線を向けながら声をかけた。
「何だ」
FCは身体も顔も視線すら動かさない。
「顔が恐いぞ」
「え?」
広報部長に指摘されてFCは視線を動かした。
眉間の力が弛んで初めて自分が眉間に皺を寄せていたことに気付く。
「何か問題でもあるのか」
「いや、別に」
今回の遠征も今のところは自分の予定通りに滞りなく進んでいる。
余計なことを考える余裕があるほどに。
「フジワラが気にしている。何か間違ったことしたんじゃないのかって」
「ああ、それは悪いことをしたな」
FCは苦笑する。
86は秋名のメンバー達の話からすると天然ボケらしいが、
Dの遠征の時、と言うより自分の目の届く所ではそんなそぶりは見られない。それだけ緊張しているのだろう。
Dのメンバーはほとんどがレッドサンズのメンバーかその関係者だ。そんな中86だけが違う。その上一番年下だ。
バトルの時はもちろん、プラクティスや調整の時はそんなプレッシャーなど気にしないだろうし、
気にさせないが、普段はできるだけリラックスさせてやりたい。
気にはなっているが自分ではかえってプレッシャーを与えてしまう。
「あいつはああ見えて結構人の顔色を気にしてるんだ。ま、人の…と言うよりお前の、だけどな」
広報部長の言葉の裏をFCはその時読み取ることはできなかった。
「別件だ。フジワラには気にするなと言っておいてくれ」
「わかった」
「ああ、フミヒロ」
広報部長の去り際に思いついて声を掛ける。
「何だ」
「K介はどうしてる?」
「あいつも今日はちょっとおかしい。浮ついてるというか……そうかと思えば妙に緊張したり」
「そうか」
FCは少し考え込んでから顔を上げた。
「ちょっとあいつに伝言を頼む。浮ついた走りをしたら、でいいんだが」
「なんだ?」
「寝ぼけているのか?と。そう言えば多分解るだろうから」
広報部長は怪訝な顔をしながらもわかったと言って去っていった。
・・・・・
「どんな感じですか?」
「ああ、足はこれでかなりイケル感じだ」
「今回の方がさっきよりタイムはいいですね。もう一度このラインで走ってみてください」
「わかった」
走行から戻ったFDはメカニックがデータの分析や微調整に取りかかったのを見ながら、
ついぼんやりと考え事をしてしまっていた。
走行中はもちろん余計なことを考える余裕などない。
路面の状況、ライン取り、ブレーキや足回りのバランス。隅々にまで神経を行き届かせて車を走らせる。
走らせるが、いつものようにテンションが上がってこない。
ふとできたこんなエアスポットのような瞬間に心はついつい出掛ける前の出来事に戻っていってしまう。
夢の中でこれ以上ないくらいの美女を口説き落とした。
その美女が問題で、顔がFCだった。いや、むしろFCが美女になっていたと言えばいいのか。
FCが女になっていただけで何故それを『これ以上ないほどの美女』と認識していたのかは不明だが、
夢だから不条理でも何でもアリだ。何の疑問も抱かず、FC美女を引き寄せてキスをして……。
気が付けば目の前には本物のFCがいた。
「勘違いじゃありません」なんて言ったら一生口をきいてもらえない。夢のことを知られたら絶対殺される。
―――ああああ。どうすりゃいいんだ。
FDは頭を抱える。
なんであんな夢なんか見たんだろう。
「たまってんのかな、俺」
車のシートに座って悶々としているとコンコンと窓を叩く音がした。
広報部長だ。ウインドを開ける。
「K介、R介から伝言だ」
「なっ、なんて……?」
心臓のリズムが倍速になる。
「『寝ぼけてるのか?』だ。何のことか解らないがそう言えば解ると」
深い怒りを露わにして自分を見下ろすFCの顔が一瞬にして頭に浮かんだ。
「あ、ああ……。よく、よーく解る……解った、サンキュ」
広報部長に動揺をできるだけ悟られないように苦労しながらFDは右手を挙げて引きつった笑いを浮かべた。
ここで気の抜けた走りをすれば本当に殺される。
とにかく結果だ。結果を出せば許してもらえると言う保証などどこにもないが、結果を出さなければ許されないことは確実だ。
FDは両手でパンパンと顔を軽く叩き、気合いを入れ直して、ステアリングを握った。
・・・・・
黄色のFDの車が僅差でゴールラインを割った時、峠がDの歓喜の声に包まれた。
二度のポジションチェンジの末ようやくFDが勝利した瞬間だ。
これでダウンヒル、ヒルクライムとも勝利で終えた。
車からFDが降りてきてみんなの乱暴な祝福を受けながら相手のドライバーと握手をしている。
FCは満足そうにFDの姿を眺めていた。
さっきのバトルではFDの成長を見る事ができた。
火のような気性と生来の天才的なカンの良さで強引に勝ちを引き寄せる。
そんな戦い方をしていたFDがクレバーな戦略を自分で考え、実践するようになった。今回の一つの収穫だ。
仲間に祝福されて喜ぶFDはFCに気付くと急に不安と緊張の入り交じったような顔つきになり、こちらに向かってきた。
「え……と、その……」
FCに向かいはするが目を合わせようとしない。そのくせ気になるのか上目遣いに顔を伺う。
FCはふっと頬を緩める。
「よくやった」
FCのたった一言でFDの不安な顔が一気に明るくなった。
声にならない叫びを上げてガッツポーズをする。
「今回のお前の走りに免じてあれは不幸な事故だったと忘れよう。タイムアタックの準備にかかってこい」
そうだ。あれは『不幸な事故』だ。
FDが誰と勘違いをしていたのかも自分の中の心のざわめきも全て『事故』として処理し、忘れる事にする。
「あ、ああ」
FDは地に足がつかない様子でみんなの元に走って行く。もしも尻尾があったならちぎれんばかりに振っているに違いない。
「K介さん、何浮かれてるんですか」とケンタに不審がられる程だ。
その後姿にFCは少し苦笑し、少し安堵する。
図体ばかりでかくなっても犬コロであることには変わりない。
自分の後を必死に追いかけてきた遠い昔。自分は弟のその縋るような目が快感で、もっと見たくてわざと置き去りにしたりした。
いつか自分から巣立っていく日が来るのだろう。自分を追わなくなる日が。
それも遠くない将来だ。
その時の喪失感を自分はどうやって補えばいいのだろうか。
それはFCにとって公道最速理論よりも難しい問題だった。
バサバサッと羽音を立てて、木の梢から一羽の猛禽類が飛び立っていった。
FCはそれを闇に溶けて消えるまでずっと目で追っていた。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ これで終わりらしい
| | | | ピッ (・∀・ )
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