新撰組 山崎丞×土方歳三
更新日: 2011-05-01 (日) 09:23:09
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| 幕末某組織 監察方×副長 再び
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 時代が逆行してるような……
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| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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月が、まるで真昼のように辺りを照らしていた。
天には雲ひとつ無く、十間先まで見通せるほどに視界は良好だ。
これほどに明るければ夜討ちもあるまい。
「副長」
低い声が、静かに夜に響いた。
背後からの突然の呼びかけにも驚きはしない。声の主は気配を消さなかった。
何度も庭先から囁かれた声だ。当然誰のものかは姿を見ずとも分る。
相手が誰か気付いても、いや、誰か分ったからこそだろうか。
士方は彼を振り返らず、呼びかけに応えもせずにただ空を見上げ続けた。
まるで拗ねた子供のような真似だ。
だが、今はどうしても、顔を見せる気にはなれなかった。
「副長、お風邪を召します」
再度かけられた声はいつものように言葉少なで遠慮がちだ。
だが、その声音には、控えめながらもと士方を案じる色が確かに滲んでいた。
(俺を責めないのか)
古い付き合いの者さえ、今夜は自分の顔を見れば眉を顰めた。
平隊士のみならず、助勤の中にも陰口を叩いたり舌打ちをする者がいた。
そうされても仕方がない、むしろこの立場は望むところだ。
いや、かえって気遣われるほうが辛い。
(結局のところ俺は、新撰組と彼の命を天秤にかけ、新撰組を取ったのだ)
宗司には、そっと背中を叩かれた。
斎等には、心配そうに見つめられた。
(止めてくれ、俺にそんな価値はないのだ)
この選択を誤りだとは決して思わない。思わないが、今夜は屯所にいたくなかった。
自分はそうやって労わられ、優しくされるに相応しい人間ではない。
数多くの仲間達の命を言葉一つで奪い、それを欠片も後悔していないのだから。
たとえ直接手を下したわけでなくとも、きっとこの手は血に染まっているだろう。
今日、また一人同志の血を吸った手を強く握り、黙って夜の空を見る。
月の光が酷く冷たい。
春の月のように優しいあの人を、殺してしまったからだろうか。
まるで兄のように、いつも見守ってくれるあの人を。
名を口にしかけて、すぐに黙り込んだ。
己の為した事なのに彼の死を悼むなど。そんな資格はとうに捨て去ったものだろうに。
救いようのない愚かさを自嘲し、口元を歪める。
と、その時。
皓々と照る月に見入る土方の肩が不意に暖かくなった。
肩口に目をやれば、掛けられているのは見覚えのある厚手の羽織だ。
咄嗟に振り返り、余計な世話を、と言う前に相手がそれを遮った。
「悲しいなら悲しいと」
先程よりも強い口調だった。
「やま、ざき」
「どうか、仰ってください。」
「………悲しくなどない。それは君の思い込みだ」
そうだ、悲しくなどない。
悔いてもいない。
これこそが自分の選んだ道。己が血刀を捧げる道なのだから。
―――--だが、目の前の男の言葉がこれほど心に響くのはなぜだ。
愚かしくもその優しさに心を慰められている己は一体なんなのか。
数えるほどの相手が示してくれた、さりげない気遣いすら厭うてここにきたのではないのか?
それが、なぜこんな言葉一つに。
別に特別なことを言われたわけでもないのだ。これくらい総司でも言う。
それなのに、どうして。
(この男だから、か?)
山碕があまりに悲痛な顔をするからか。真っ直ぐに自分を見るからか。
これほどに、慕ってくれるからか。
それとも………
「思い込みならばよろしいのです。ですが、少しでも思い悩むことがおありならば」
監察は辛い仕事だ。
新撰組でありながら武士とは名ばかり、華々しい舞台も活躍もない。
ことによっては何日も乞食の真似事までして、挙句に「犬」と罵倒される。
それほどに苦しい役目を押し付けらたのに、何ゆえにここまでの好意を見せるのだろう。
「どんなことでも結構です、お話しになってください。けして他言はいたしません」
「悩みなど」
「犬猫よりはよい聞き手でありましょう。どうか、私に仰ってください」
江戸での素のままの自分を知っているわけでもないのに、この男は容易く虚勢を見抜く。
冷たい仮面を剥ぎ取り、心配そうに覗き込み、優しい言葉をかけようとする。
自分に触れもしないくせに。
「……山碕」
「はい」
先を促すでもなく、ただの返事でもない。
士方の全てを肯定するような応えだ。
この声に依存してしまいそうな自分が恐ろしい。
だが、遠ざけてしまうにはあまりにも心地よかった。
「山碕、私は……」
「はい」
なにを女々しいことを。
「私は……俺は……」
やめろ、よせ。頭の奥で警鐘が鳴り響く。
『士方歳造』ではなく『親撰組副長』であろうと、そう決めたのは自分だろう。
堪えろ。この先を独りで往くならば、ここで弱音を吐いては――――
「……俺は、決してあの人を嫌いではなかったんだ」
精一杯の自制心を働かせて、それでもこの一言だけが零れ落ちた。
その瞬間、どこか困ったようないつもの笑顔で。
それでいいのだと頷く貴方が見えたのは、俺の願望だろうか。
「ええ、知っていますよ。最初から」
穏やかに、包み込むように囁かれた言葉に、思わず振り向いた。
「三南さんも、きっと分っていらっしゃいました。あの人はそういう人やった。ご存知でしょう?」
僅かに混じった優しい国訛りに、思わず素直に頷く。
そう、あの人はそういう人だった。
聡い人だった。強い人だった。そんなこと、自分が一番よく知っている。
そこでようやく士方はしっかりと目の前の男を見た。
山碕は珍しくちゃんと腰に二本差した姿だったが、この寒い中上着の一つも着ていない。
とすれば、先ほど肩にかけられたのはこの男の物だったのだろう。
直ぐに脱いで返そうとすると、小さく首を横に振られた。
「それはそのままに……さあ、もうお戻りください。この分ではそろそろ雪が降るでしょう」
包み込むように穏やかな眼差し。
触れられてもいないのに、暖かくなるような。
士方は小さく溜め息を漏らすと、ゆっくりと屯所の方へ足を向けた。
(俺はいつか、この男の優しさがなければ立っていられなくなるかもしれんな……)
僅かな敗北感が、何故か不快ではなかった。
踵を返す間際、山碕の肩越しに見た月が先刻よりも優しく見えたのは、気のせいだろうか。
亡き人の、もう見ることのない笑顔のように。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 士方、陥落。…切腹!
| | | | ピッ (・∀・ )
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