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SANTA! ゼノン×ツキナ

 赫々と燃える篝火が爆ぜる音に混ざって、乱れた息遣いが石壁に跳ね返る。
 妖しく蠢く影を作り出しているのは、大人びた顔を今は苦しげに歪めた金髪の少年と、
その上に覆いかぶさった黒い長髪の男だった。
 肩からしどけなく黒衣を羽織った男は全身を様々な装身具で飾り、艶やかな黒髪を
幾条も細い蛇が這うように身体に纏いつかせ、白い肌が篝火の光を受けて微かに輝く
様は闇の王のように美しく見えた。
 対照的に、短い金髪の少年は石造りの祭壇の上で両腕を鎖で張り付けにされ、着衣
をずたずたに切り裂かれている。自由に動かせる筈の両足は黒髪の男の手に掴まれ、
その肩の上に担ぎ上げられてなす術もなくただ激しく突く動きに従って揺さぶられる
だけでしかない。
 少年は、男に犯されていた。

「く…、あぁっ……」
 小さく少年の口が動く。掠れて声も出ないのか、誰かの名を呼んだようにも見えたが
誰の耳にも届きはしない。
「フフ、随分と頑張るじゃないか、ツキナ」
 黒髪の男は怜悧な印象の美貌をうっすらと赤く染め、深い紫の瞳で自らの下に組み
敷いた少年を見下ろした。
「早くこのオレに魔呪力を渡すと言え。でないと……」
 自分の右肩に乗せた少年の脚を長い指の先でツツツ、となぞり下ろしていく。指は
少年の左足の付け根まで来て止まった。そこには数字の刻まれた星型の痣がある。
「本気で奪うぞ」
 爪の先を痣の縁に食い込ませると、じわりと赤い血が珠となって溢れ出してきた。

 それでも少年は翡翠の色をした瞳で男を見据えて薄く笑ってみせる。
「……無理だ。オレは、絶対におまえのモノにはならない」
 声は掠れてはいたものの、確かな力がまだ残っていた。
「ツキナ……貴様っ!」
 男がツキナの股間のものをぐっと掴む。あまりのことに悲鳴を上げることすらできない
様子を見て取った男は勝ち誇った笑みを浮かべて更に少年を幾度も突き上げる。
「どうしたツキナ! あれこれとほざいてくれる割に、今のおまえは完全にオレのモノに
なってるんじゃないのか?」
「うあっ…!」
 一旦動きを止めると乱れた黒髪を掻き上げ、男は組み敷いた相手を見下ろす。
「『英雄』と同じ顔が今どんな風になっているか自分で判っているのか? ツキナ。オレに
犯されてこんなに淫らに喘いで、啼いて……救世主とヤツを崇める連中が今のおまえを
見たら、どう思うんだろうな」
 紅い唇を舐め、妖艶な笑みを浮かべてみせる。
 だが二つの翡翠の瞳は少しも輝きを失わなかった。
「それでも……オレも、世界も……おまえのモノにはならないのさ、ゼノン」
 苦痛を堪えて薄く笑ってみせるツキナにゼノンの頬が痙攣した。

「ツキナァ……」
 美貌を醜悪に歪めたゼノンがやにわにツキナの頬を張る。返す手で逆の頬も。そして
ツキナを抱き竦めると血の滲んだ唇を奪う。
「ん……ぐむっ」
 両膝が肩につくほど身を折り曲げられたツキナはもがいたが、両手を鎖に戒められ、
身を貫かれたままではさしたる抵抗もできよう筈がない。
 ゼノンは嘲った。
「おまえとオレは同じ存在(モノ)だろう? ツキナ。人間でありながら同じ魔呪力を持つ同志
……この世界の真の支配者となるべき存在じゃないか」
 甘く囁いては自身の手で打ったツキナの頬や耳朶に舌を這わせる。
「オレと同じように、おまえも他の魔呪力を持った獣人どもとは違う存在だ。あんなクズの
ような獣人どもなど、オレ達が世界を手にするための踏み台でしかない。真の支配者と
なるべき魔王の継承者は、オレと……おまえだけなんだ……ツキナ……」
 いつしか男の口調は震え、熱を帯び、懇願するかのようなものになっていった。
 だがツキナの返答は淡々としたものだった。
「……例え魔呪力を持っていても、オレとおまえが完全に違うことを知ってそう言うのかよ、
ゼノン」
 キッと男が眦を吊り上げる。
「ツキナ……今のおまえは英雄でもアララギケイスケでもない! 呪われし力を受け継ぐ
同志なんだ!」
 一気にゼノンはツキナの体内から身体を抽いた。
「おまえはオレのものなんだ。それを解らせてやる」
 秀麗な容貌からは想像もつかない程に太く長大で赤黒い肉棒が、ツキナの眼前に
そそり立っていた。

 とっさに顔を背けようとしたツキナの頬を両手の腹で押し潰すように挟み込み、無理やりに
開かせた口の中へゼノンは反り返った肉棒を突き入れた。
「!」
 口腔をいっぱいに塞がれたツキナが吐きたそうな顔になるのを見て、唇の両端を
吊り上げて笑う。
 ツキナが逃れようとするのを許さず、続け様に幾度も幾度も喉の奥目掛けて激しく腰を
振り、口腔内を蹂躙する。
 やがてゼノンはツキナの前髪を掴んで顔を上げさせた。凶暴なまでの口淫のために
溢れた涙と涎で汚れた顔には生気がない。
 その口の中からゆっくりと己の肉棒を引き出した。
「ンム……、はぁっ……」
 ようやく解放されたツキナが大きく息を吸った瞬間、目の前に白濁した液がぶち撒けられる。
「うわぁぁっ!」
 男の精液をまともに目に浴びたツキナが身を折って悶える姿にゼノンは哄笑した。
「不様だな! 今のその姿こそが、おまえがもはやアララギケイスケではない証拠になる!」
 鎖で手を繋がれている為に顔を手で拭うことすらできないツキナを上から押さえつけると、
そっとツキナの汚れた顔に舌を這わせた。
「う……ぐっ……。……ゼノ…ン……?」
 涙と精液で濡れた赤い目元と頬とをゼノンは舐め続け、やがてツキナがその瞳を見せる。
涙で潤んだ、鮮やかな翡翠の瞳を。
 ゼノンの胸は高鳴った。
 身体が疼く。身体中を流れる魔王の血が、己を滅ぼした代わりに己の魔力の継承者と
仕立て上げたこの相手を手に入れたいと望んで滾っているのだ。
「ツキナ……」
 自分の身体にある星型の痣が熱を持って脈打つようだ。剥き出しの肉棒も再び勢いを
取り戻している。
「ツキナ、オレは……!」

「お楽しみのところ悪いが、俺達にもお裾分けしてくれねぇか? おまえらの声がこっちに
まで響いてきててな。どうにも堪んなくなっちまってよ、ゼノン」
 戸口から声を掛けてきたのは、尖った耳に鋭い牙を持つ狼の獣人だった。巨大な体躯
は全身びっしりと灰色の剛毛で覆われているが、その股間には鮮やかな肉色をした怒張
が滾っている。
 ――ゲス犬が。
 一瞬で冷めたゼノンの紫闇の双眸が獣人を見据えたが、狼の獣人の後ろに影のように
立つもう一人の獣人を見てやや表情を変えた。漆黒の身体に黄金の瞳を持つ鴉の獣人
は、彼にとって現在の片腕でもあった。
「どうした」
「ゼノン、確かにこいつの言う通りだ。ツキナを捕らえたことで同志達の殆どが酷く興奮
している。とりあえず、交渉役に私とこいつが立つことで他の連中を黙らせてはきたが……」
 鴉の言葉を狼の獣人が遮った。
「あのツキナと言やぁ、俺達獣人にはとっ捕まえて頭から食い殺したって足りねぇくらいの
借りがあるんでな。せめて慰み者にでもしてやるんでなけりゃ、気がおさまらねぇのよ」
「そうだゼノン、そいつをヤらせろ!」
「オレにもだ!」
 いつの間にか他の連中までが狼の獣人の後ろに詰め掛けてきていた。
「おまえらは黙っていろとあれほど……!」
 鴉が咎めるのも聞かず、獣人達はゼノンの周囲へ寄っていく。

「ゼノン!」
「ゼノン!」
 盟主たる男はゆっくりと紫の瞳で同志を見渡した。
 血走った獣達の目。生臭い息。
 次いで、男は祭壇の上に力なく横たわる少年を見下ろした。
 男の放った体液と汗と涙にまみれた少年は、乱れた呼吸の中、薄く翡翠の瞳を開く。
 ――苦しげではあるが、恐怖の色も怯懦の色もない。敗北者の目ではない。
 再び、男はゆっくりと紅い唇の端を吊り上げた。
「……殺すなよ」
 石の壁に獣達の歓喜の声が谺(コダマ)し、炎は幾つもの黒い影がただ一人の生贄に
向かって群がる様を踊るように映し出した。
 たちまち辺りは怒声と歓声に包まれ、野卑な蔑みと暴力とで少年を嬲ろうとする獣人
達の宴の場と化す。
「おまえはいいのか?」
 ゼノンの視線を受けて鴉は大きな嘴の端肉をやや上に向かって曲げ、ついでに肩を
竦めてみせた。
「鳥の私が参戦したところで、ツキナには大したお楽しみではなかろうよ。もっとも……
殺さぬようにいたぶるだけならば、あの連中より余程長く楽しんでもらえることと思うが
な。どうせ、それは許さないのだろう?」
 黄金色の目を細めて笑う鴉にゼノンも妖艶な微笑みを返した。
「あぁ、ツキナには大切な役割があるのだからな」
 踵を返すと一転して厳しい声音で鴉に命じる。
「絶対にあの下衆どもを暴走させるな。ツキナの指の一本は奴らの腕一本でも贖えないぞ」
「承知した――王子ゼノンよ」
 狂騒の中、静かに鴉は魔王の継承者に対して膝を折る。

 獣人達によって押さえつけられ、代わる代わる犯されながらツキナの心の中にはただ
一人の面影だけが浮かんでいた。
 金の髪に金の瞳。人間の女の腹から生まれ、ツキナの弟として育った魔王の継承者。
 血は繋がっていない、けれど最愛の弟。
(オレの全ては……おまえのものだ……サンタ……)
 翡翠の瞳がゆっくりと閉じられ、透明な涙の雫が石の床へこぼれ落ちていく。

「ツキナが……逃げた?」
 輝く朝日を受けながら、ゼノンはゆっくりと振り返る。
「済まん、ゼノン。油断しちまった。……あの身体で逃げられるわけはなかったんだが……」
「追っ手を差し向けているが、未だにどの部隊からも連絡がない。全員殺られた可能性が
ある」
 狼の獣人が低く唸るように詫び、隣で控える鴉の獣人も低く頭を垂れている。
 ゼノンは紫闇の瞳でそれを冷たく見下ろした。
「……まあいい。いずれツキナはこのオレの許へ戻ってくることになる。今は自由に泳がせて
やるさ」
 右の拳を握り締める。
(世界も……ツキナも、全てオレのものだ!)
 燃えるように赤い太陽を背にゼノンは命じる。
「行くぞ。まだオレたちには堕とさねばならないものが山程残っているのだから」

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